大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(ネ)380号 判決

控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は、被控訴代理人において、「坂田第十区は、群馬県邑楽郡大川村大字坂田にある坂田第十区と称する一部落の住民がその共同の利益のために該部落内の神社の祭祀、道路の補修、清掃、照明その他一般福祉の増進を目的とする部落民によつて、組織された法人格なき社団である。本件において、坂田第十区を代表する小田勇は昭和二十五年八月二十五日の部落民総会において坂田第十区を代表して裁判上、裁判外の一切の請求手続をする権限を与えられたものである。本件請負契約については、その完成時期は昭和二十四年十二月二十五日、代金支払期日も同日の約定であつたが、その請負作業は昭和二十四年十月頃完成したものである。」と述べ、控訴代理人において、「坂田第十区の法律上の性格に関する被控訴人主張事実は知らない。」と述べた外、原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する。

<立証省略>

三、理  由

一、被控訴人坂田第十区は、詳馬県邑楽郡大川村大字坂田にある坂田第十区と称する一部落の住民(戸数約百六、七十戸)が団結して一の団体をなし、その共同の利益のために該部落内の土木事業の設営、村役場との事務連絡その他区民の一般福祉の増進を目的として組織せられ、同区は区民より区費を徴収して区の事業運営に資し、同区においては、区民全員によつて構成せられる定時総会が毎年二期に開催され、区の機関たる駐在員、班長その他の総代が定時総会において選任せられ、区は区民の変動によつて影響を受けないものであるという一の組織的団体をなした法人格なき社団であることは、当審における被控訴人代表者小田勇訊問の結果並びに同人の供述によつて成立を認め得る甲第三号証及び弁論の全趣旨を照し合せてこれを認めることができる。従つて被控訴人坂田第十区は、その総会において選任された代表者を通じて自己の名において有効に私法上の契約をなし得るものというべきである。

二、被控訴人が小田勇を代表者と定めて、昭和二十四年九月頃控訴人から被控訴人主張の格納庫解体作業を代金百十三万四千円で請負い、代金支払期日を同年十二月二十五日と定めたことは当事者間に争がなく、同日迄に作業を完成する約束であつたことは控訴人において明に争わないからこれを自白したものとみなす。

三、成立に争ない甲第二号証、原審証人川島源蔵、植松義一、当審証人川島新一郎の各証言、原審並びに当審における被控訴人代表者小田勇訊問の結果を綜合すると、被控訴人が請負つた前記格納庫解体作業は約定期日より早く完成したものであつて、その作業の結果も約束通りの出来上りであつたので、控訴人も何等異存なく請負代金の支払を諒承したにも拘らず、控訴人は請負代金百十三万四千円のうち金八十六万五千円を支払つたのみで、その余の金二十六万九千円の支払をしないことが認められる。

原審証人直井義明及び原審並びに当審における控訴人本人は、被控訴人の作業は約束どをり行われなかつたので直井義明に手直しをさせ、金四十万円以上も支払つた旨供述しているけれども右各供述は前掲各証拠に徴し措信し難く、他に右認定を覆すに足る確証はない。

四、控訴人は、右請負代金に対して、なお、金一万円を支払つたと主張(原判決事実摘示一の抗弁)するけれども、これを認むるに足る証拠はない。尤も原審証人川島源蔵、植松義一の各証言、原審並びに当審における被控訴人代表者小田勇訊問の結果によれば、被控訴人は控訴人から昭和二十五年三月頃金一万円を受取つたことがあるが、右金一万円は被控訴人が控訴人から支払を受けた前掲金八十六万五千円の内払金のうちに含まれているものであることが認められるから、控訴人の右主張は採用することができない。右に説明した金一万円は本件請負代金の内払ではない旨の控訴人本人の供述(原審並びに当審)は措信しない。

五、次に控訴人の主張する原判決事実摘示二、の抗弁につき考える。原審並びに当審証人馬場万平、当審証人大塚節子、須賀真一及び控訴人本人(原審並びに当審)は、いづれも控訴人の主張に副うような供述をしているけれども、右各供述は後記認定に援用した各証拠に照しにわかに措信しがたく、却つて当審証人川島新一郎、植松義一の各証言、原審並びに当審における被控訴人代表者小田勇訊問の結果を合せ考えると、控訴人が主張する格納庫解体後における敷地の整地作業は訴外川島新一郎と、小田勇が控訴人の懇望によつて右格納庫解体作業完成直後控訴人から請負い、坂田第十区の部落民の労力によつてその工事を完成し、その請負代金二十万円はその頃支払を受けたのであるが、右整地作業の請負に関しては被控訴人坂田第十区としては何等関係はなく、単に小田勇が個人として川島新一郎と共同で請負つたものであり、しかも屑鉄等の残物売却は川島新一郎がしたものであつて、被控訴人はもとより小田勇もこれには関係はなく、従つて残物の売却代金のうちから本件請負代金の支払を受ける約束は勿論、その支払を受けたこともない事実が認められる。以上のとおりであるから、被控訴人は本件請負代金の残金を右残物売却代金から支払を受けたとの控訴人の抗弁も亦これを採用することはできない。

六、然らば、控訴人は被控訴人に対し本件格納庫解体作業請負代金の残額金二十六万九千円及びこれに対する代金支払期日の翌日である昭和二十四年十二月二十六日以降右完済に至る迄年五分の割合の損害金の支払義務があること明であるから、被控訴人の本訴請求を認容した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がない。

依つて、これを棄却すべきものとし、民事訴訟法第三百八十四条、第九十五条、第八十九条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判官 浜田潔夫 河合清六 仁井田秀穂)

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